住宅診断と既存住宅瑕疵保険の違いとは?双方の特徴を理解しよう!
不動産を紹介するサイトでは「既存住宅瑕疵保険加入」と表示された物件を見かけることがあります。これは保険期間中に住宅に問題が起こった場合、保険金が支払われるという意味です。「ならば安心して購入できる!」と感じるかもしれませんが、残念なことにそれは一部のことでしかありません。あわせて住宅診断を受けることをおすすめします。
住宅診断とは?
住宅診断とは、ホームインスペクションともいい、新築・中古を問わず住宅に問題があるかどうかをチェックしてくれるサービスです。中古住宅の購入時なら住宅診断を受けることで不具合を発見することができるので、買主は購入後にどの程度のリフォームが必要になるかをイメージしやすくなります。
雨漏りやシロアリなど、費用がかかりそうな問題が中古住宅に見つかったなら、買主は購入を見送ることもできますし、購入を条件に売主や仲介業者に修理や値引きを依頼することができるかもしれません。
幅広い住宅診断の範囲
住宅診断は資格を持つ担当者が、目で見ることができる範囲全てをチェックします。場合によっては建物だけでなく、塀や門、カーポートなど外構部のチェックも依頼することができるでしょう。
指摘するのは現在起こっている問題だけでなく、将来的に問題が起こりそうな箇所も含みます。現在起こっている雨漏りだけでなく、バルコニーや樋、サッシなどをチェックすることで、防水や詰まり、コーキングの劣化なども指摘し、早期に修理やリフォームを行うことをうながすのです。
既存住宅瑕疵保険とは?
「既存住宅瑕疵保険(きぞんじゅうたくかしほけん)」とは、売買後の中古住宅に瑕疵(かし)が見つかった場合に、保険金が支払われるという仕組み。この場合の瑕疵が指しているのは、中古住宅における欠陥のこと。
具体的には基礎や柱、梁など建物を支える部分に問題があったり、雨漏りの発生が起きたりした場合、買主は保険金で補修を行うことができるのです。
よく似た制度に「住宅瑕疵担保責任保険(じゅうたくかしたんぽせきにんほけん)」がありますが、前者が中古住宅を対象にしていることに対して後者は新築住宅、前者の期間が1年、2年または5年に対して後者は10年となっています。
既存住宅瑕疵保険は義務ではない
新築住宅が対象の住宅瑕疵担保責任保険は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により義務付けられていますから、新築の住宅を購入した方すべてが保険金の支払いの対象です。
一方、既存住宅瑕疵保険は義務付けられたものではありませんから、保険金の支払いの対象となるのは、保険に加入している一部の中古住宅だけです。また保険の期間が「1年、2年または5年」となっているのは、加入している保険の種類によって期間にばらつきがあるからです。
すべての建物が加入できるわけではない
既存住宅瑕疵保険への加入には、保険会社が行う検査をパスする必要があります。健康保険と同じでどんな建物でも加入できるなら、保険金の支払いで会社が破綻しかねないでしょう。それだけに既存住宅瑕疵保険に加入できている物件なら、その段階で一定のクオリティを満たしていると考えることができそうです。
住宅診断と既存住宅瑕疵保険両方の利用がおすすめ
既存住宅瑕疵保険付の物件が、一定のクオリティを満たしているとはいえ、すべての面で安心できるわけではありません。住宅診断もあわせて受けるべき理由は以下の通りです。
検査範囲が違う
既存住宅瑕疵保険のための検査と住宅診断は、検査範囲が大きく違います。既存住宅瑕疵保険のための検査は基本的な住宅の性能を満たしていることがメインであることに対して、住宅診断は今後住み続ける上で問題に発展しそうな箇所も指摘。
たとえば外壁に用いられている、サイディングボードにひび割れがあっても、既存住宅瑕疵保険のための検査で指摘することはないでしょう。住宅診断は診断士が目で確認できる箇所すべてが検査の対象です。
保険期間さえ持てばいい?!
既存住宅瑕疵担保保険は、加入する保険の種類によって1~2年または5年と期間が設定されています。つまり極端なことをいうなら、検査の担当者が保険期間中に問題が発生することはないと判断したならば、保険に加入できてしまうと考えることもできるのです。
検査をパスしたはずの箇所に大きな問題が発生したとしても、保険期間が過ぎて以降ならかまわないというのが、保険会社の基本的な考え方です。一方の住宅診断は現時点の問題点だけでなく、将来的に問題が発生しそうな箇所も指摘してくれます。
住宅診断後で指摘された箇所、すべてを補修した物件と、既存住宅瑕疵保険付き物件は、両方とも安心して住まうことができるという点で共通しています。しかし両者は本来別のもの。住宅診断は全身隈なくチェックする泊りがけの人間ドック、既存住宅瑕疵保険は年1回の定期健診くらい両者の内容には大きな差があるのです。
保険に加入できているからといって、人間ドックの受診が不要ではないように、既存住宅瑕疵保険が付いた物件も、住宅診断を受けたほうがいいでしょう。